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降り続いた雪は粉雪となりフワフワと舞っていた。
「小降りになってきたし帰るか」
書きかけの作文を前に伸びをして大澄に声をかけた。
「あ、ほんとだ。止んでるね」
「…」
「え?」
「え?じゃねぇよ。用意しろよ。送るから」
そう言うと彼女の白い肌がポッと赤くなった。
つられて赤くなる俺。
「あ、ほら…あぶねぇし」
わざとらしく後付けた。
いや、ここで俺が照れるのはおかしいだろ。
「ありがとう。でも私、もう少ししてから帰るね」
机の上には整然と並べられた写真がある。
「もうすぐ出来上がるから、文集。写真選んで、あと和田君の作文が揃えば完成」
ガシガシと頭をかいて誤魔化す俺を彼女が目を細めて見る。
結局作文は仕上げられなかった。
一時間くらい座ってじっとできる忍耐力が欲しいぜ…。
「わかってるよ、ちゃんと書いてくるからそんな目で見んなよ」
楽しそうにコロコロと笑い、小指を立てた。
「約束よ?」
指切り?指切りをしろってのか俺に。
むぅ、とした顔で見つめられると何か負けた気がした。
小さい手の、短い小指に自分の指を絡ませた。
びっくりする程冷たい手。
ドキドキして、それがバレるのが恥ずかしくてすぐに放した。
「約束ってのは破られる為にあるんだぜ」
照れ隠しにボソッと言った俺に大澄がムッとしてるのが見えた。
「和田君っ!」
「あぁもう、冗談じゃねぇかよ!…んじゃ俺、先帰るわ。お前も気ぃつけて帰れよ?」
「ありがとう。また明日ね」
また明日、というフレーズが何だかくすぐったい。
「…おう」
ぶっきらぼうに答える俺を笑顔で見送ってくれた。
ふわっとした笑顔で。
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