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治りきってなかった風邪は容赦なく猛威をふるった。
節々が痛く、熱がぐんぐん上がっていく。
薬を飲み横になるとすぐに眠気がやってきた。
大澄が死んで1週間。
胸のモヤモヤは晴れないまま彼女の事ばっかり考えてた。
だからかな?
大澄の夢を見た。
ふわっと笑ったり、怒ったり、淋しそうな顔をしたり、子供みたいにミルキーを頬張ったり、冷たい指で指切りしたり。
大きな目、白い肌、細い首に後れ毛…。
ふいに視界を覆うたくさんの花びら。
これは、桜…?
目が覚めた。
やけにリアルな夢で、夢じゃないような変な感覚。
匂いとか、手の冷たさとか、何かもう大澄の感じが全身にまとわりついてる。
びっしょりと汗をかいて気持ち悪い。
大澄はあの桜を見たがってた。
蕾はもう開いただろうか…。
気が付けば自転車にまたがって全速力で飛び出していた。
白い息を弾ませて校庭を走る。
何でこんな事してんだよ俺は。
分からないけど必死であの桜の木を目指した。
熱の冷めきってない体は思いの外重く、辿り着いた時は肩で息をしていた。
何て言ったっけ…この桜の木。
見上げると花は見事に満開で、我が目を疑った。
ついこの間まで蕾だったのに…すげぇ。
ポカンと口を開いて見上げていると、クスクス笑う声がした。
???
『ね?キレイでしょう?』
振り返るとそこには見覚えのある、でもちょっと見知らぬ女の子がいた。
『緋寒桜、だよ』
長い髪はふわりと広がり、小さな彼女をより小さく見せる。
「大澄…?」
熱で頭、おかしくなったのか?
俺はバカだけど頭おかしくなった覚えはねぇぞ?
ぱちくりしている俺に彼女は柔らかく微笑む。
『作文、できた?和田君』
…間違いなく大澄だった。
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