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4
コーヒーを飲みながら新聞に目を通す。
「全く世知辛い世の中だわね」
バサッと何かが落ちる音に振り返ると、ワナワナと震える母さんがいた。
「小夜…あなた今日は一人で起きれたのね!」
「…まぁね」
「母さん、嬉しいっ!」
喜ばれるような事はしていないんだけど。
何故なら。
「これから寝るのよ」
母さんに空になったカップを渡して自分の部屋へ向かう。
「小夜ーーー!!」
うちの母親はきっとヒステリー持ちなんだろう。
世の中の常識とか秩序とか、守らなきゃいけない事が多すぎる。
やるべき最低限の事さえしてればそれでいいじゃん。
そう言うと遥はバカにしたように笑った。
『小夜って意外と子供なんだね』
『はぁ?ガキに言われたくないわよ!』
『守れる事をしっかり守った上でやるべき事をやるのが当たり前の事じゃん』
屁理屈を正論で返されてムカッときた。
『…ガキのくせに』
ボソッと悪態をついた。
すると遥は頬をプーッと膨らませて、その顔は完全に幼稚園児。
『僕、ガキじゃないもん!僕は…』
言いかけて口をつぐむ。
『僕は?何よ?』
『…そういう所が子供なんだよ』
俯いて膨れる遥を見て、確かに大人げなかったと反省した。
川に足を浸けてパシャパシャと水遊びをする遥に手を差し出す。
『何?』
『いいから、ホラ』
小さな手のひらにそっと自分の手を置く。
『あ!四葉のクローバー!』
キャッキャと嬉しそうに飛び跳ねる遥。
『いいことあるわよ』
じっと私の顔を見るその目は何かにすがるようだった。
『ほんとに?』
ただのクローバーなのに、遥は真剣だ。
『…うん、きっと』
私は不安を打ち消してやるかのように微笑んで頷いた。
白い肌をうっすら赤らめて遥はクローバーと私を交互に見て彼は言った。
『僕、これ一生大事にする!』
やっぱり子供じゃない。
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