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ガツン!
信じられない痛みで目が覚めた。
そこには真剣に読みふけっていた本を片手に仁王立ちしている母さんの姿があった。
「かど?そのいかつい本のかどで殴ったの?」
「だまらっしゃい!あなたここで何時間寝れば気がすむの!」
「へ?今何時?」
「…」
お手上げと言った感じで母さんは部屋を出た。
ただでさえ晴れない頭に余計な考え事が増えてしまった。
そしてこの憂鬱な学校への道程。
里沙に体力も精神力も吸いとられてる気がする。
だけどその日あのうるさい声を聞くことはなかった。
次の日も、その次の日も、彼女は学校に来なかった。
毎日のようにキャンキャン吠えられてるといつも以上に静かに思える。
里沙のいない隣の席をぼんやりと見つめていた。
恐ろしく眠い。
死ぬほど眠い。
でも、寝たいのに眠れない。
いつもあの夢で目が覚めるのだ。
悲しそうに、淋しそうに泣く子供…私を殺そうとするのに、いつもその寸前で目が覚める。
で、目が覚めたらもう眠れなくなっている。
眠いのに!
…決めた。
私は決めた。
何があっても寝る。
もう余計な事、考えたくない。
この日常が嫌で、忘れたくて、そしたら遥に出会って、それが何となく楽しくなって、でも悩む事が増えて…。
もうたくさんだ。
めんどくさい。
学校を早退して家路を急ぐ。
今日は何があっても絶対に起きない。
家に帰りゆっくりとお風呂に浸かった。
しっかり汗をかき、体の芯まで温めて、ムダ毛の処理をした。
髪を乾かし、一番リラックスできる部屋着に着替えた。
冷たい水で喉を潤し、一気に飲み干す。
爪を切り、耳そうじして、眉毛を整えた。
これは心地よい眠りの為の儀式だ。
「あなた、何やってるの?学校どうしたのよ」
一部始終を見ていたらしい母さんは訳が分からないといった様子でいる。
「あぁ、ちょっと」
「ちょっとじゃないわよぉ。怖い顔して…頭おかしくなっちゃったの?」
確かに、寝ることにこんなに必死になるのはどうかしてるかもしれない。
「母さん」
「何よ?」
「私、ちょっと寝るから」
母さんの眉間に一気にシワがよるのが見えた。
まさに鬼の形相。
叫ぶ母さんを残してベッドに潜り込む。
すごいスピードで眠気が押し寄せてきた。
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