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暗く、深い闇の中。 泣いている声がこだまする。 『…結局この夢を見るのね』 ため息混じりに声を辿った。 うずくまり泣きじゃくるその子供に今回ばかりは腹がたった。 『あんたねぇ』 腕を組み見下ろして睨み付ける。 『いい加減にしてくれない?私はね、しっかり眠りたいの。邪魔するんなら今日は容赦しないわよ』 『僕、一人ぼっちなんだ』 始まった。 『会いたい人がいるんだ。でも会えなくて淋しいんだ』 いつもなら側にいてあげる、と言うところだったが今日の私は違う。 『その人の事、好きなの?』 泣き声がピタッと止まる。 『好きなら好きって言えばいいじゃない。こんなとこでメソメソしてないでさっさと行けば?』 『え?』 こんな子供相手にムキになってバカみたいだけど、私にも睡眠時間がかかっている。 引き下がる訳にはいかない。 『別にあんたと死んでやっても構わないけど私は満足のいく眠りが欲しいの。だからゆっくり寝かせてよ』 その子の頭をなでてやりながら続けた。 『だからあんたは好きな人に会いに行きなさいよ。別に死ぬのはその後でもいいでしょ』 『会いに?』 すごい鼻声でびっくりした。 思えばこんな風に話をするのは初めての事だ。 『そうよ?そうやって泣くのはフラレてからにしなさい』 あ。 『あと、私の邪魔しないでね。次邪魔したら本気で怒るわよ』 よし、これでもう大丈夫。 さて、寝るぞ!と思った時。 『あははははっ』 いきなり笑い出す子供を怪訝に見つめていると、思い出した。 『小夜らしいね』 私はこの子を知ってる。 闇は光に照らされて無くなり、初めてその子の顔を見た。 初めて? いや、違う。 この子は… 『遥…?』 ニッコリ笑って遥は言う。 『会いたかったよ、小夜』 小さな手で私の顔を包み込むようにして唇を重ねた。 そして悲しそうに微笑んだ。 『ごめんね』 涙をポロポロ溢しながら。
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