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13
眩しい光で目が覚めた。
「小夜…?」
覗き込む母さんの顔は泣いて目が腫れていた。
ゆっくり起き上がり思いっきり伸びをした。
霧が晴れたように頭はスッキリとして、体は軽く全ての感覚が戻ってきたような感じがした。
久しぶりの快眠にとても気分が良かったので、つい。
「あーーーよく寝た!」
途端に母さんのビンタが飛んできた。
「いったぁ…何すんのよいきなり!」
ふと見渡すとそこは病院だった。
何が起こっているのか事態が飲み込めないでいる私に母さんの怒声が響く。
「何すんのよ、じゃないわよ!あなた何日寝てたと思ってるの?6日よ?あなたのちょっとはどんだけ長いの!」
泣きながら怒る母さんの言葉にびっくりした。
6日?
6日って…あれからそんなに時間が経ったという事?
「こうしちゃいられないわ!」
慌てて飛び起きて病室を飛び出した。
「小夜ーーー!待ちなさい!話は終わってないのよ!」
数ヶ月振りに携帯を触った。
無理矢理に番号を押し付けられたけど、この時ほどあのうっとうささに感謝した事はない。
「もしもし、里沙?」
「あ、小夜?初めてだね電話くれるの~」
この明るい声の裏には弟思いの優しさが隠されている事を思い知った。
「病院、どこ?」
しばらくの沈黙の後、里沙は何かが切れたように泣き始めた。
「第一北総合病院」
「すぐ行く」
電話を切り走り出した。
こんなに走ったのは生まれて初めてで、こんなに体が軽いのも初めてだった。
必死に走って病院に着くと里沙が目を真っ赤にして待っていた。
「里沙っ!」
「小夜ぁ…」
「遥は?遥は生きてるの?」
「506号室…」
里沙の頭を抱き、慰めるように言った。
「遥は死なない。私が約束する」
病室へと急いだ。
そこには見慣れたようで初めて見る遥の姿があった。
静かに眠る遥にゆっくり近づいて顔を見た。
やつれた顔に、青白い顔…でも確かに遥だった。
長い睫毛に、柔らかく綺麗な髪。
「遥…起きてるんでしょ?」
彼はピクリともしない。
「来てあげたんだから起きなさいよ」
浅い呼吸音が聞こえる。
そっと遥に唇を落とした。
「ん…」
睫毛がピクッと動き、茶色い瞳が私を見つめる。
「小夜…?」
「遥…」
力なく微笑んで遥は言った。
「眠り姫みたいだね、僕」
自然と涙がこぼれた。
「おはよう遥。とてもいい朝よ」
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