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私はめでたく留年して母さんにこれでもかというほど叱られた。 恐ろしく大きな音のする目覚まし時計を設置され、毎朝頭をかち割られるような衝撃で目を覚ましている。 どうやら私は元々寝坊助で寝起きも悪いみたいだ。 爽やかな風が吹く昼下がり。 いつものように昼寝をしようと屋上へ行くと先客がいた。 「また昼寝?」 ベンチに寝転び本を読む遥がいた。 「あんたもでしょ」 クスクス笑いながら手招きをする遥の隣に腰を下ろす。 遥は相変わらず華奢だけど、細いながらにしっかりした体つきで、背も凄く伸びた。 長い時間眠っていたせいか成長が著しい。 こうして遥と過ごす事ができる日常がとても新鮮で、幸せだ。 日差しがとても暖かい。 「大きくなったら分かるって言ったよね」 「ん?」 「あ、また覚えてないんだ」 何の事だか、という風に肩をすくめて見せた。 そんな私の肩を抱き寄せて耳に唇を寄せる。 「ばっ…」 「幸せだよ、僕」 意地悪く口の端を持ち上げて笑う。 年下の遥に私は翻弄されっぱなしで、それが悔しい。 「あんたねぇ…」 「続きを教えてくれるんじゃなかったっけ?」 「くぅ…」 満足そうにニコニコしている遥に何も言い返せないのもまた事実で。 私の心を知ってか知らずか遥は言うのだ。 「小夜、大好きだよ」 そして私は遥の膝枕で穏やかな眠りに落ちるのだ。
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