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図書室で本を2、3冊借りて屋上へ向かう。
今日は天気が良いからきっと彼女も昼寝にやってくるはずだ。
長い階段を上り、重い扉を開くと太陽の光に目が眩んだ。
「僕、生きてるんだな…」
死ぬかもしれない、そう思ってたから不思議でたまらない。
暖かい日差しを浴びたり、爽やかな風を吸い込んだり。
そして…
「あら、またサボり?」
愛しい人を感じたり…ね。
「小夜!」
彼女は気だるそうに伸びをした。
風に乱れる髪を片手で押さえて忌々しそうな顔をする。
そんな彼女を感じられる幸せ。
「何にやけてんのよ。気持ち悪いわね」
…何を言われても、幸せだよ。
小夜は相変わらずよく寝る。
彼女に言わせると「一時よりマシ」だそうだけど、小夜の睡眠時間は異常に長い。
この昼寝でも彼女は平気で3、4時間は寝る。
だから僕はいつも本を持ち込むのだ。
もう随分たくさんの本を読んだ。
「やっぱりここが一番ね」
僕の膝を枕にして小夜はとびきり綺麗に微笑む。
たまに見せるこの笑顔が僕は大好きだ。
やっぱり僕…幸せだよ。
だからつい、彼女に口付けずにはいられないのだ。
真っ赤になる小夜はとても可愛い。
「何でそんなに余裕なのよ」
「余裕なんかないよ?僕ばっかり好きみたいでいつも不安だしね」
「は?」
僕は口をつぐみ、小夜の細い黒髪に指を滑らせた。
こうすると小夜は気持ち良さそうに目を閉じる。
「こうして一緒にいると、まだ自分が夢を見てるんじゃないかって思う時があるの」
小夜の意外な言葉に僕は目を丸くした。
「これは夢じゃないのよね?」
確かめるように僕の頬を触る小夜の手を握った。
「僕の事…好き?」
「…」
嘘ぉ…。
気持ち良さそうに寝息をたてている。
がっくりと肩を落として借りてきた本に目を落とした。
小夜は夢の中でも、毎日会えるようになった今でも一度だって好きだと言ってくれないでいる。
僕の自惚れじゃなければ嫌われてる訳ではないだろうけど…やっぱり言葉が欲しい。
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