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「姉ちゃん、ちょっと聞きたい事あるんだけど」 姉ちゃんは卒業してすぐ働きに出ている。 「勉強なら小夜に聞いた方がいいよ?」 「その小夜の事で聞きたいんだよ」 キョトンと僕を見て…そして次第に険しくなる姉ちゃんの顔。 「私だって仲良くなりたいのに!あんたがでしゃばって横取りしたくせに!あんたの方がよく知ってるんじゃないの?何?自慢?許せない!」 バカバカと背中を叩く姉ちゃんの手を制して反論する。 「何だよ!姉ちゃんは僕と小夜を会わせてくれようとしてただけなんだろ?」 「遥ばっかりズルい!」 この人ってこんなにやかましい人だったかな…? ひとしきり暴れると落ち着いたみたいで、姉ちゃんは話し出した。 「口止めされてたんだけどさ。あの日、あんたの目が覚めた日ね。小夜ってばすごい勢いで病院まで走って来たんだよね」 僕はずっと病室のベッドの上だったから知らなかった。 目が覚めたら小夜がいたから。 「あんなに必死な小夜、初めて見たよ。あんたが起きてる事も知らないでさ。そんでね…」 そう言ってクスクス笑う。 「何だよ?教えてよ」 ニタニタしながら姉ちゃんは言った。 「『遥は死なない、約束する』って私を抱きしめたのよー!素敵だったなぁあの時の小夜!」 キャー!って自分の体を抱きしめ悶絶している。 「…姉ちゃん、小夜の事好きなの?」 頬を赤らめて衝撃発言。 「私、負けないからね」 「ぼ…僕だって!小夜は渡さないから!」 姉弟ゲンカはあらぬ方向へ発展してしまったけど、初めて聞いた小夜の事。 いつもクールで掴み所のない彼女が、そんなに必死になってくれていた事が嬉しかった。 そして益々小夜の事が好きになった。
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