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4
どんよりと重い空。
今にも降りだしそうな空を見上げながら小夜を待っていた。
目を閉じれば脳裏に焼き付く彼女の笑顔で僕の心はあったかくなる。
恋というものは不思議だ。
こんなに幸せになったり、どうしようもなく不安になったり。
「小夜、苦しいよ」
「どうしたの?」
いきなり話しかけられて驚いた僕はすっとんきょうな声をあげて振り返った。
「具合が悪いの?顔色が悪いわ」
僕のおでこに手をあてて覗き込む。
夢の中と違い現実の小夜は無表情で感情を読み取る事ができない。
だからこそ、たまに見せる笑顔が僕を嬉しくさせるんだ。
そして彼女の気持ちがわからなくなって不安になる。
「ううん、大丈夫だよ」
そう?と言って僕の隣に座る小夜はとても眠そうだ。
雨の降る日はすごく眠くなると言う。
「それにしても毎日余裕ね。大丈夫なの?」
大丈夫なの?
大丈夫な訳がない。
僕はこんなに切羽詰まっているのに。
「余裕なんかないよ!」
突然声をあらげた僕を彼女は驚いた様子で見つめている。
モヤモヤした気持ちを吐き出すように叫ぶ。
「小夜は僕の事何だと思ってるの?寝心地のいい枕くらいにしか思ってないんじゃないの?」
彼女は何も言わない。
「小夜は自分の気持ち何も言ってくれないじゃんか!僕ばっかり好きみたいで不安なんだよ」
真っ直ぐ僕を見つめている小夜はやっぱり壮絶にキレイで。
大好きなその目が、今は僕の胸を締め付ける。
「僕は小夜の何なの…」
最後はとても小さな呟きになっていた。
「言いたい事はそれだけ?」
ハァ…と大きなため息が聞こえて僕はそこから逃げ出した。
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