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7
「私、怖かったのかもしれない」
小夜がふいに口を開いた。
「え?」
照れたように笑う彼女は本当に綺麗だ。
「まだ夢を見てるような気がするって、前に言ったわよね?」
僕の膝枕の上で甘えるように腰に手を回して抱きついてきた。
「私も幸せなのよ。遥がいつも一緒にいたいと思うように、私だってそう思ってる」
彼女の髪を指でとかしながら聞いていた。
「だから、これは夢じゃないかって。想いを口にすれば目が覚めるんじゃないかって、不安だった…でもね」
小夜の腕に力が込められる。
「好きよ」
くぐもった声で小さく囁くように。
でもそれは確かに僕が欲しかった言葉。
「もう一回言って」
「一回しか言わない」
「お願いだよ!ね?」
「うるさい!」
僕の口を手で塞いだ彼女の温度は熱くて、気付いたんだ。
小夜が僕に抱きついてきたのは真っ赤になった顔を隠すためにだって。
首まで赤くなっている。
「僕も大好きだよ!」
愛しさが込み上げて、思いっきり抱きしめた。
夢のように幸せだ。
でもこれは夢なんかじゃなくて、ちゃんと現実なんだ。
「生きてて良かった…」
呟く僕の膝の上では小夜が静かに寝息をたてていた。
しっかり4時間眠り彼女は気持ち良さそうに伸びをした。
「それにしてもあなた、ホントに余裕なのね」
「小夜さん、話を聞いてましたか?」
流石にこれには苦笑い。
「私が言ってるのは授業の事よ?」
今度は小夜が苦笑いする番だった。
「真面目に出ないと私みたいにダブるわよ?」
「…」
「ありがと。寝心地のいい膝枕だったわ」
首を鳴らしながら階段を下りる後ろ姿を見送った。
そして僕の悪夢のような補習生活が始まる。
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