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ダンダンダン…! それは怒りを含んだ足音。 バタンッ! 怒りに任せてドアを開ける。 バサッ! 「小夜!起きなさい!起きろ!」 布団を奪われ、胸ぐらを掴まれてがくがくと揺さぶられる。 ぶらんぶらんと前後に首を揺らされ、目が覚めた。 「…んぁ?どうしたの?」 眠りの世界から抜け出せないでいる私に母さんの怒りの声がこだました。 「小夜ーーー!」 こっぴどく叱られた私は渋々学校へ行く。 朝早く起こされたものだから、ホームルームの1時間も前に着いてしまった。 教室には誰もいない。 机に突っ伏して眠りを貪った。 静寂がストン、と落ちてくる。 どこかで泣いてる声が聞こえてきた。 聞いてるこっちがどうにかなりそうなくらい悲しい声。 「…っ!」 どうして泣いてるの? 「小夜っ?さーやー!」 明るい声で無理矢理現実に引き戻された。 気が付くと他の人達はすでに教科書を広げている。 「珍しいね~朝から来てるなんて」 浮かれた里沙の声に苛立ち、思いっきり睨むけど、彼女は気付かない様子で話し続けた。 昨日どうしたの?昨日のドラマ見た?今日遊びに行かない? …耳が痛くなる。 里沙のお喋りも、先生の授業も何も頭に入らない。 何故こんなに眠いんだろう。 ここの所頭がすっきりする事がない。 体がだるくて、重くて、眠い。 うるさい世の中、つまらない日常。 眠っている時間だけが、私の心を満たしてくれる。 ここ最近、眠る時間は確実に長くなってきている。 そして決まってあの夢を見るようになった。 『こんにちは、小夜』 何度か出会ううちにすっかりなつかれてしまった。 『今日は制服なんだね』 『あ、ホントね。今日は朝から学校行ってたから』 遥は可笑しそうに笑う。 『今日はって、普通毎日朝から行くもんでしょ?』 子供に説教されてムッとする私に遥は目を輝かせて聞いてきた。 『学校、楽しい?』 何とも可愛い質問だ。 『大きくなったら分かるわよ』 ふぅん、と大して気にならないといった感じで呟く。 この感じが子供にしては大人びて見える。 『その制服、東高だよね?』 『そうだけど、知ってるの?』 遥はたまに何もかも知ってるような話し方をする。 そのくせ何も知らない無垢な子供の顔をする。 『似合うね、女子高生って感じだね』 ルーズソックスとか履くの?と聞いてくる遥は、一体いくつなんだろう?
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