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フラフラと階段を上り教室を目指す。 とりあえず出席しないと留年、と担任から言われた母さんが血走った目で私に迫ったのだ。 「お願いだからせめて学校だけでも行ってちょうだい」 あまりの剣幕に押されて、ここ2、3日真面目に登校している訳だ。 「小夜~おはよう!」 毎日のように付きまとう里沙にももう慣れた。 「…はよ」 無愛想に答える私。 相変わらず授業に身は入らず猛烈な眠気が私を襲う。 すっきりとした青空、晴れない私の頭。 起きてる事が苦痛でしょうがない。 耐えられなくなって屋上に来た。 ベンチに横になった途端、私は夢の中だった。 どんなタイミングで寝ても遥はそこにいる…はずだった。 でも今日は見知らぬ男の子が一人空を仰いでいた。 不審に思い遠くから様子を伺っていると男の子は振り返ってパッと笑顔になる。 『小夜!』 名前を呼ばれてビクッと体がこわばった。 怪訝な顔をする私に彼は笑顔で言う。 『僕だよ』 まさかとは思ったけど、何となく面影はある。 『遥、なの?』 ゆっくりと頷いて四葉のクローバーを見せた。 『何でおっきくなったの?』 素朴な疑問を素直にぶつけてみた。 『さぁ、わかんない』 うーん、と唸って考える仕草は前より少し精悍になっていた。 『小夜が僕の事ガキガキって言うからじゃない?』 …まぁ、夢なんだから何が起こっても不思議じゃないか。 夢なんだけど、妙にリアルで、でも現実味はない…何ともおかしな感覚だ。 『今日も制服だね』 『あぁ、今私屋上で昼寝してるから』 『寝るのが好きなんだ?』 夢の中の私は起きている時より元気でシャンとしている。 面倒な事も忘れられる。 『あんまり寝てばかりいちゃダメだよ』 『大きなお世話よ』 つっぱねた私に遥は言う。 『いや、真面目な話』 突然肩を掴まれ、その強い力に抵抗できず遥と向かい合わせになった。 茶色がかった、綺麗な瞳が私を捕らえた。 『そんなに寝てばっかだと…』 遥の目を真っ直ぐ見つめる。 悲しげな光を帯びていたその目は遥の方からそらされた。 『寝てばっかだと?』 促す私に、しばらく黙り込んで遥は口を開く。 『…脳みそ腐るよ?』 『…』 同じような事を誰かに言われたような気がする。 目が覚めると空は紅く染まり、肌寒い。 「…帰ろ」 本当は何て言おうとしたんだろう…ぼんやりと考えながら学校を後にした。
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