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6
耳障りなチャイムの音に目が覚めた。
ここの所気が付けば眠りに落ちている。
重い頭を持ち上げて、ゆっくりと席を立った。
フラフラ歩く私にあのやかましい声が飛んできた。
「小夜~!もしかして帰るの?」
パタパタと隣に走ってきて楽しそうにじゃれてくる。
「…あのさぁ」
さすがにうっとおしくなって里沙に言う。
「あんた、何で私につきまとう訳?」
意味が分かってないのかキョトンとして私の顔を見た。
「うるさいしウザいし迷惑なのよね。意味分かる?」
どんどん曇っていく里沙の表情。
構わず続けた。
「私じゃなくても友達はたくさんいるんでしょ?もう付きまとわないでね」
言うだけ言って帰ろうとする私に里沙は小さく呟いた。
「小夜じゃなきゃ意味ないもん…」
予想に反して小さな声に驚いて振り返るけどそこに里沙の姿はなかった。
『冷たいんだねぇ小夜って』
年頃の男の子に成長した遥は花畑に座り四葉のクローバーを探していた。
『友達いないでしょ』
悪びれもせず言う遥の言葉にすかさず反論した。
『めんどくさいから』
クスクス笑う声はかすれて男らしい色気さえ感じる。
でも、ガサガサと花をかきわけて必死で探す姿はまだ幼さを残していて、チグハグで何だか笑えた。
『何?』
振り返った遥は頭や顔に草やら花びらやらを引っ付けていて、その姿に思わず声を出して笑った。
駆け寄って頭を払い、頬の泥を拭いてやる。
『どろんこになって、楽しい?』
『うん。楽しいよ』
即答した遥は私の顔をまじまじと見た。
『ん?何よ?』
『そんな顔して笑うんだ』
笑ってた?私が?
自覚がなくて戸惑っていると遥が言った。
『笑ってた方が可愛いよ』
『…からかってんの?』
ニッコリ笑ってまた花畑に潜る遥にドキドキと胸がうるさかった。
『あったぁ!小夜、見て!』
キラキラ目を輝かせて駆け寄ってきた。
手のひらにはイビツな形の四葉が握られていた。
『僕、自分の力で見つけたの初めてだよ!』
嬉しそうに飛び跳ねる姿にまた顔がほころぶ。
『はい、小夜』
条件反射で手を出すと、私にクローバーを手渡した。
『何?くれるの?』
こっくり頷く遥。
『僕が見つけたんだ。きっといい事があるよ』
目が覚めてギョッとした。
私の手のひらには夢で渡された四葉のクローバーが握られていたから。
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