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3日間真面目に学校へ行く事がこんなに体力と神経をすり減らすなんて知らなかった。 昔は毎日出来てた事を思うと自分がすごく老けたような気がする。 気だるい体を引きずって階段を下りる…と足を踏み外した。 ズダダダダ…! 「小夜?大丈夫?!」 「…」 「小夜!どうしましょう…」 「…んが?」 オロオロする母さんを見てさすがに申し訳ない気分になった。 「ごめん、あんまり眠いから」 プツン、と何かが切れる音とゴチン、と衝撃を受けたのはほぼ同時だった。 「頭でもぶつければよかったのよ!全くもう!」 母さん、望み通りあなたの鉄拳は私の頭にしっかりヒットしてます。 老けたような気がするのもあながち外れてはいないのかもしれない。 ぼーっとするのに加えて少し動いただけですぐ疲れるし、視界も悪く、あらゆる感覚も鈍ってきた。 何より、歩きながらでも食べながらでも眠ってしまう事に一抹の不安を感じる。 日常生活に支障が出つつあった。 心ゆくまで眠れば、また普通に戻れるのだろうか。 『小夜!こんにちは』 そう、気付けばこんな風に夢の中にいる。 眠りの予兆がないから、自分がどこで眠っているのかも分からない。 『…何かまたでっかくなってない?』 この間中学生並だった遥は更に背が伸びて益々精悍な顔つきをしている。 伸びた髪を後ろで結んでいた。 『うん、そうみたいだね』 さして気にしていないような口ぶりは何だか冷たく響いた。 『最近ホントによく眠るね、小夜』 『そうなの。自分でも不思議なくらいに眠くて』 ピクッと遥の顔がひきつる。 『すぐ疲れちゃうし何だかスッキリしないのよね』 歳かしら?と笑う私を見つめる遥は明らかに動揺していた。 『何…どうしたの?』 『ごめん』 一瞬の出来事だった。 長く、深いキスは必死ですがるような淋しさが伝わって来て息をする事もできない。 細い腕に抱き締められて何がなんだか分からなかった。 遥の心臓はうるさく音をたてて動いている。 『ごめんね、小夜…』 抱き締める腕に力が込められた。 『もう寝てばかりいちゃダメだよ』 遥は小さく震えている。 『じゃないと…連れてっちゃうよ?』 目が覚めた。 ぼんやりと曇る意識の中、遥の感触だけがやけに残っていた。
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