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泣き声が聞こえる。 悲しそうに、淋しそうに泣く声。 『どうしたの?』 その子は一人ぼっちで淋しい、会いたい人がいるのに会えなくて悲しいと言って泣いていた。 『じゃあ、私が一緒にいてあげる』 泣き声は止んで、ほっとした私の首をその子は締め上げた。 ―ジャアボクトイッショニシンデクレル?― 何となく気分が晴れなくて相変わらずぼんやりと頭にモヤがかかっている。 リビングでコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。 母さんはソファに座り本を読んでいる。 「何読んでるの?」 無言で私にタイトルを見せる。 <現代社会における子供と睡眠の関係> 「…」 「あなたとあなたの脳みその為よ」 そう言って真剣に読書に励んでいた。 ベランダから生暖かい風が吹き込んでいる。 揺れるカーテンを虚ろに眺めていた。 最近、遥に会っていない。 そのかわりに、いつも泣いている子供が出てくるようになった。 暗闇の中、悲痛な声で泣きじゃくるその子は私を殺そうとする。 でも私は抗う事ができない。 首を締められるその手から、孤独とか不安とか恐怖…淋しい感情が流れ込んでくるから。 怖い、と思うより先に悲しい。 いいよ、と言う前にいつも目が覚めるのだ。 そんな事を考えてるうちにウトウトと睡魔に襲われた。 『久しぶり』 少し疲れた顔の遥がいた。 『うん、久しぶり』 心なしか顔色が良くない。 『淋しかったんだ?』 そして意地悪。 しばらく会えなかった間、色々考えていた。 遥が何者で、何故こうして出会ったのか。 何故謝り、あんなに淋しいキスをしたのか。 チラッと遥を盗み見た。 俯き加減に歩く彼の横顔はやつれていて、儚げに見えた。 遥は何か知っているのかもしれない…そう思って口を開いた。 『遥?あのね…』 言いかけた途端手を掴まれた。 細い指を私の指に絡ませて、キュッと握る。 『しばらくこのままでいて』 耳まで真っ赤にした遥はまだまだ子供なんだと思う私の顔も負けずに赤くなっていた。 気になっている事をはぐらかされたみたいで納得できなかったけれど、繋いだ手はとても温かくて。 胸が切なく鳴いた。
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