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俺は一人、駅へと向かっていた。
私服に身を包んだ俺は、両手をポケットに突っ込んでいる。
駅の裏側に回り、梯子を登る。
靴が金属と当たり、コツンと音を鳴らす。
俺が梯子を登り終えると、街が一望出来た。
夕日が街を朱に染めている。
俺は手頃な足場に腰を下ろす。
左側のポケットから、袋を取り出す。
俺は袋を開けて、先ほど買ったアイスを食べている。
只今の時刻は五時。
皆が遊び終え、帰宅する時間帯だ。
今は冬から春にかけての、新学期に向けての春休みを迎えている。
しかも、新学期前日だ。
皆、課題を終わらせたり準備で忙しいだろう。
まぁ、俺は終わってるけど…
無心で俺は、アイスを食べ終えた。
棒アイスには、『ハズレ』の文字が刻まれている。
ハズレなら、書かなくても良いのに…
俺は立ち上がり、右側のポケットからストラップを取り出す。
蒼い透き通った色をした、羽の形をしたストラップ。
俺の思い出の品だ。
かつての親友と交わした約束。
それを象徴した物だ。
俺は一度立ち上がり、ストラップを夕日に翳す。
夕日に透き通るストラップは、夕日の光で綺麗な色合いを魅せている。
俺はその光に見とれながら、ある人物の愛称を呟く。
空「相棒…」
俺はストラップをしまい、梯子へと歩き出す。
俺は悲しくも忌々しい記憶を忘れようと、無我夢中で梯子を降りる。
俺はまだ、立ち直れない…
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