第三章 駆ける電狼たち

76/82
前へ
/355ページ
次へ
小隊長たちの言葉に,中隊長は思考の海に入る。確かに前進を続けることはできる。しかし,前進すれば占領した村の防御戦力が不足してしまう。そうなれば,陸軍が来るまでは歩兵の兄弟たちがしのぐしかない。しかし,陸軍を待っていては,この先の皇国軍が奇襲の混乱から回復し,防御を固めてしまうだろう。 中隊長は,一度後方の本部に通信を行おうと,車内に入り,通信機の受話器を通信手から受け取った時だ。渡河の際,海兵隊戦車本部にて聞いた司令部の訓示の言葉を思い出した。 「なすべきことをやれ」 中隊長は,覚悟を決めた表情で受話器を通信手に返し,再びキューポラから身を乗り出す。 「JD大尉はいるか!」 「ここにいる。なんだ?」 中隊長は大声をあげて,橋の検問を制圧した部隊の部隊長の名前を呼ぶ。すると,その場にいたJD大尉がすぐに応えた。 「我々はこの先に前進したいが,支援は必要か?」 「問題ない。陸軍が来るまで持ちこたえてみせる」 JD大尉の言葉に,中隊長は覚悟を決めた。中隊長は通信手に中隊全車両に通信を開く。 「これより我が中隊は,前進を続けれる。全車,隊長車に続け!」 そう宣言すると,中隊長車のエンジンは唸りをあげて発車する。すると他のM3スチュワートも中隊長車を追うように出発する。
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加