第三章 駆ける電狼たち

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前線の報告が読み上げられる内容に,白色・黄色系皇国陸軍幕僚の顔色がそれぞれ変わって行く。ある者は悔しがる表情を浮かべたり,悲壮感をかもし出したりと千差万別の様子を出していた。そんな中,リベア中央をルシュテンハットとカルネロの帝国連邦諸国陸軍が国境を越境し,そのまま進軍を続けたことが告げられた。 その瞬間,白色系皇国陸軍幕僚の1人が固く拳を握り締め,そのまま机を思い切り叩いた。そして憤怒した様子で大声で叫んだ。 「くそ,この戦いはもう敗けだ。」 その一言に周りにいた幕僚は,驚いた様子だが誰も反対をする者はいなかった。誰もが机に広げられた地図を見て確信してしまったからだ。 皇国駐屯軍は遅延作戦を長期継続するために,中央にいた予備戦力を北部に移してしまったのだ。これもカルネロやルシュテンハットの帝国連邦諸国軍が北部に主力を移したからだ。 だが,主力だと思ったのは,ただの囮だった。本当の主力は,既にリベア中央をがむしゃらに進軍を続けている。このままでは,カルネロとルシュテンハットの帝国軍がリベア中央部で合流すれば,巨大な包囲網が結成され北部は完全に孤立してしまう。
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