第三章 駆ける電狼たち

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「皆,議論の余地はないと思うが,何か異論はあるか」 報告を聞いた幕僚の1人がただ静かに口を開く。その言葉に,周りにいた他の幕僚は俯いて沈黙を守っている。口を開いた白色系皇国陸軍幕僚は,報告した士官に向かって口を開く。 「直ちに司令部にいる士官や参謀たちをこの部屋に集めろ。大至急だ」 「はっ!」 士官が敬礼すると急いで部屋を後にする。遠のく足音を聞きながら,幕僚たちは深くため息を吐いた。 やがて,司令部にいた白色系・黄色系皇国陸軍や海軍の士官や参謀が集められ,幕僚たちに向かって敬礼をする。幕僚たちが答礼をして敬礼をとくと,1人の幕僚が口を開く。 「単刀直入に言う。もはや我々のリベアでの戦争は終わりだ。これからやることは,皇国のこれからの戦いに必要なことだ」 幕僚の言葉に部屋はざわめくが,参謀が手をあげると一瞬で静かになる。さらに幕僚は続ける。 「北部に展開中の前線部隊及び後方支援部隊を含む全ての部隊を,包囲が完成する前に後退せよ」 「これはあらゆる命令より重視される。戦車や大砲等の重火器放棄もやむ無しとする」 「とにかく兵士を後方に移動させ,リベアを脱出させる。今戦っている兵士たちは,これからの戦いに必要な戦力であることを心せよ」
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