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そんな桟橋の情景を既に沖合いに停泊し、出港を待つ輸送船最上甲板から双眼鏡で見ている黄色系の男がいた。男は兵隊と同じ服装をしているが腰には軍刀をさげて足はゲートルを巻いておらず皮の長靴を履いている。
彼は飯沼定信と言う名前で階級は少佐である。痩せ方の体型と顔だがこれでも剣道の有段者でもある。鋭い眼光を放っているが部隊の体罰禁止や兵と一緒に食事したりと兵隊受けがよく、兵や下士官には人気がある。
「飯沼定信少佐、こんな所におられましたか」
名前を呼ばれた飯沼は振り返るとそこには赤羽義久と名札を縫った若い男がいた。
赤羽義久の階級は少尉で今年士官学校を卒業して飯沼の所に任官し今は飯沼の副官をしている。ハンサムな顔立ちで女に良くモテルが彼は空手の有段者であり、兵隊とすぐ打ち解ける気さくな性格で兵隊達と仲がいい男だ。
「飯沼でいいぞ赤羽少尉、で何だね?」
「はっ部隊全員がこの出撃に対してかなり意気込んでいますよ。船室で皆が小銃を磨いたり銃剣を研いだりしてますよ。」
「それはいいな。なんせ我々特設第26連隊は上陸作戦の先端を担う部隊だ。それくらい意気込んでもらわなんとな」
「確かにそうですね。上陸する日が楽しみですよ」
そうして二人はまた軍港の方を見ることにした。
ウミネコの鳴き声が響くなか赤羽少尉が
「しかし、共和国との関係がこんなに急展開するとは思いもよりませんでしたね」
「確かにそうだな。議会でもこちらの案がまさか採択されるとは思ってもおらんかったよ」
と飯沼少佐が口を閉ざすと赤羽少尉も飯沼少佐も何かを思い返そうとした。
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