第一章 開戦

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その後は、与党も陸軍案に賛同し賛成多数で議会は共和国と戦う道が選ばれた。後に御前会議においても天皇陛下の前で正式な開戦日時が決まった。 南海の水面を眺め、これまでの議会の動きと身に起こった事を思い出していた飯沼定信と赤羽義久の耳に輸送船の汽笛が鳴り響いた。汽笛から出た水蒸気の白い煙が南海の青空に浮かんでは尾を引いて空に消えた。 輸送船から排煙の黒い煙りが上がり始めると飯沼定信の部隊と兵員と物資、兵器を積んだ輸送船が船団を組み、その周りを駆逐艦と軽巡洋艦、戦艦が操艦して縦一列になり護衛陣形が完成する。 そんな見事な艦隊運動を間近に見た飯沼は 「やはり見事なもんだ。さて赤羽よ。これから大変だぞ。」 「わかってますよ少佐、帰る時は凱旋帰国しましょう」 お互いに顔を見て笑いあうと二人は船室へと歩いていった。 そして護衛艦艇も輸送船も微速で前に進み始めた。輸送船の最上甲板に上がった兵隊達と水兵達は軍港の波止場で見送る人達に手を振ったり、帽子を振る。 波止場からも「万歳」と言う声が響き渡った。
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