1586人が本棚に入れています
本棚に追加
/997ページ
--
「不気味な輝きに見えるのは、私に原因があるのでしょうね……」
王宮の一室から見える始まりの鐘を見つめながら、シルは1人呟く。
特別な力がある訳ではない。
ただ、過去に一度も鳴った事の無い鐘。
この大陸中にあるその鐘は、人類が栄えるより前からあると伝えられている。
「誰か居ませんか?」
シルは始まりの鐘から視線を移すと、近くに控えている侍女を呼んだ。
「はい、こちらに」
若い女が姿を現し、その場で膝を付く。
「あの少女を連れてきて下さい。それと何か飲み物をお願いします」
「かしこまりました」
侍女はすぐに下がって行く。
その侍女を見送ったシルは、深いため息を吐いた。
「この王国が揺らぐ事があってはいけませんからね」
シルはそう呟きながら再び始まりの鐘を見つめ出した。
そして、暫く時間が過ぎた時、侍女が少女を連れて戻って来た。
体を震わせるその少女に「何もしませんよ」と優しく囁きながら、椅子に座るように促した。
「まずは名前を教えて下さい」
俯きながら座る少女に刺激を与えないように聞くシル。
そんなシルに少女は「リリィー」と名乗った。
最初のコメントを投稿しよう!