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「この魔石は間違い無く天使の涙です」
「何!?」
「間違いありません。この感覚は天使の涙です。しかも、かなり強い」
シオンはその魔石を優しく包み込むように握り締める。
「老人が見えます……」
シオンは老人の姿を脳裏に見ていた。
どこか牢のような場所に閉じ込められている姿が見えるのだ。
「老人と言ったのか?」
フリックはシオンの両肩を揺らした。
「お前は以前、天使と契約していたよな?だから分かるとでも言いたいのか?」
「分からないですよ。俺はもう天使の力を使う事は出来ないですから……。でも、この感覚は忘れようもありません」
シオンから魔石を受け取ったフリックは「まさか、あの爺さんが天使だと言いたいのか」と呟く。
「フリックさんは天使と会ってるんですか?」
「いや、分からないな……。自ら天使と名乗ったとしても、信じられない」
第一、天使とは神々の子供の事を指す。
その神の子供が見えるとは思えない。
ましてや、牢の中に居るなどと、誰が思えるだろうか。
「この魔石が天使の涙……」
フリックは呟いていた。
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