予兆

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「俺達の出来る事はない。もし有ったとしても、アキュアは軍に戻す事はしないぜ」 フリックは力強くそう言うと、空になったグラスに酒を注いでいく。 そして、グラスに注いだ赤い液体が甘い香りを放っていた。 この酒は、グラン王国で採れるベリー果実を発酵して作ったもので、大陸全土で飲まれている。 ベリー果実は栄養価が高く、乾燥させる事で非常食にもなるのだ。 その酒を見つめる2人。 丁度その時、扉を叩く音がした。 「こんな時間に誰だ?」 立ち上がったフリックが、入口に向かって行く。 「誰だ?」 「こんな時間に申し訳ありません」 聞き慣れた懐かしい声がフリックに届いた。 「シルか!?」 扉を開け、外で立っている男を見た。 間違いなく、それはシルだった。 「突然すまない」 「いや構わないが、軍務卿が1人でうろつくのは関心できないな」 シルを中に招き入れながらそう言ったフリックは、客間へと案内して行った。 「適当に座っていてくれ。何か飲み物を持って来よう」 「すまん。気にしなくていい」 「遠慮するなよ」 フリックはシルに笑みをこぼすと、客間から出て行った。
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