予兆

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暫くしてフリックは2つのグラスを抱えて部屋に入って来た。 カチャカチャと心地良い音が、シルの耳に届く。 「酒ですか?」 「たまにはいいだろ」 フリックは2つのグラスに酒を注ぎ、それをシルに手渡した。 「久しぶりの再開に」 お互いのグラスを重ね、口に運んでいく。 2年振りの再開になるのか……。 そんな事をフリックは考えていた。 以前はアキュアの副官として、グラン王国軍神聖騎士団を率いていた。 アキュアは最年少にして十二神将に選ばれ、最強の名を欲しいままに周辺国に響かせていたのだ。 そして、現軍務卿であるシル・メイアも、当時はアキュアと同じ十二神将の1人だった。 アキュアの良き理解者であり、戦友でもある。 そのシルが、突然訪れて来た。 恐らく軍に復帰して欲しいのだろう。 「アキュアは元気ですか」 先に沈黙を破ったのはシルだった。 「もうすぐ顔を出すさ」 フリックはそう言った後「それより、シルが来た理由を教えてほしいな」とシルの目を見ている。 「理由は分かるでしょう」 そのシルは、当たり前のように平然と言った。
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