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エランの呼吸が荒くなり、その瞳は真っ赤になっている。
その姿にシルは満足そうに見ていた。
「どうです?体の奥から力がみなぎって来るのが感じられるでしょう」
「な、なにを言うか……私は……っ!?」
そこでエランの意識は途絶えた。
「初めはそんなものです。目が覚めれる頃には落ち着いていますよ」
シルは声を上げて笑った。
そこには、穏やかな笑みを見せる姿ではなく、人を見下す魔族としての顔があった。
「オデッサの失態といい、役に立たない者ばかりで困りますね。仕方ありません……あの方が来られる前に私が出ましょう」
シルは意識を失ったエランを見下ろしている。
どんな能力が発揮されるのか楽しみだが、今は消えた人々を探す方が先だった。
「まぁ、だいたい分かっているのですがね。下から嫌な気配が伝わって来ていますよ」
誰かに話すような口調で言うと、エランから視線を外しながら、部屋の入り口へと向かって行った。
「何が出て来るのか楽しみですね」
シルは腰の剣を握りしめていた。
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