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「止める必要はありません。これは私がフリックにお願いした事ですから……」
「女王……」
使用人は一瞬、自分の耳を疑った。
今、ミラン女王は自分がフリックにお願いしたと言ったのだ。
「女王自らが、その様な事を……」
全身の力が抜けていく。
まさか、そんな事があっていいのかと……。
「ライラは優しいと聞いています。正義感が強く、困っている者を見れば手を差し伸べる……」
ミランはテラスから目を離さず言葉を続ける。
「フリックは最後まで反対していました。彼なら当然ですね。でも仕方の無い事です。我が王国軍は周辺国に対し防御を固めなければなりません。つまり、貴族達と戦うだけの戦力が無いのです」
そこまで話したミランは、ようやく視線を使用人へと向けた。
「だからと言ってあれでは彼女が可哀想です」
「そうですね。ライラの心に傷が残るかもしれません。そうなる前にシオンが止めに入るでしょう」
ミランはシオンが止めに入ると確信しているのだろう。
だからと言って許される事ではない。
「これは、このグラン王国が変わる為の一歩です」
使用人の気持ちなど構う事なく、ミランは強い眼差しを向けていた。
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