予兆

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「私達が軍に戻ったとして、何か出来るとは限らないぞ」 シルが口を開くより先に、アキュアがそう言った。 「あなた達2人の幸せな時間を奪うつもりはありません。ですが……」 シルは最後まで言う事が出来なかった。 そう、2人の時間を奪う事はあってはならない。 あの争いを乗り越え、ようやく結ばれようとしているのだ。 「シルの気持ちは分からない訳ではない。俺がお前の立場なら同じ事をしたさ」 悩むシルを見たフリックは「気にするな」と、付け加えた。 「すみません。邪魔をしてしまいましたね」 「シルならいつでも歓迎だがな」 「そう言って貰えると、気が楽になりますよ」 シルは立ち上がると、改めて2人を見た。 「2人の式典の時には呼んで下さい」 「--ばっばか!」 シルに言われたアキュアは、顔を真っ赤にして部屋から飛び出して行った。 「変なん事言うから出て行ったぜ」 「変なん事ですか?早く一緒になればいいじゃないですか」 「簡単に言うなよ」 「しかし、本当に美しくなりました。今度、王宮に遊びに来て下さい。ミランも驚きますよ」 シルはそう言って帰路に着いた。
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