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ライラの瞳は濡れていた。
そんなライラにシオンは優しく抱き寄せている。
「オレはアキュアさんもフリックさんも嫌いじゃありません。でも、こんな事されれば誰だって嫌いになりますよ」
そのシオンの言葉は、フリックの心に重くのしかかった。
「言い訳はしない」
フリックはそれだけを言うと、シオンとライラに背を向けた。
「お前たちにその気があるなら俺の部屋に来い。正式な騎士として俺の軍に参加する事になる。時間は夜明けまでだ。それまでに来なければ、この話は無しだ」
そう言い残して、フリックはその場から去って行った。
「今回の件はミラン女王の命令でした。フリック殿は最後まで反対していましたが……」
残されたジュリアは話の途中で敬礼すると、フリックを追うように走り去って行く。
「ミランさんの命令……」
シオンはジュリアの言葉を繰り返していた。
そしてその時、大地教団の神殿にある始まりの鐘が、いつもと違う怪しげな光を一瞬だが放っていた。
その光は少し赤みを帯び、いつもより明るさを増した。
だが、その異変に誰も気付く事は無かった。
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