襲撃

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-- デルララの王宮では、シルの送り込んだ使者の対応に追われていた。 「本当にシルからの書簡なのか?」 軍の編成をしていたフリックが、息を切らしながら走って来る。 よほど急いでいたのだろう。 額には汗が光っていた。 「間違いありません。シルの書簡です」 ミランは複雑な表情をしている。 微かに震える体を隠そうともしない。 よほどのショックだったのだ。 そんなミランを見ながらも、フリックは書簡を強引に受け取った。 「これは……」 フリックの表情が鋭くなっていく。 怒りに肩が震え、シルからの書簡を握りつぶした。 「初めからこれが目的だったのか」 フリックは使者に近寄ると、胸ぐらを掴む。 「何か聞いているんじゃないのか?」 「いえ、私は書簡を届けよと命令を受けたのみです」 「ならば、お前たちの規模を言え」 フリックは怒りを隠そうともしない。 それを止める者も居なかった。 「早く言えよ」 「私は正式な使者です。目的意外の事を口にするのは……」 「そうか……ならば、今ここで首を落とされても文句は無いな」 フリックは掴んでいた胸ぐらを離すと、腰にあった剣を抜いた。
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