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夜空を焦がすように照らす炎。
普段は始まりの鐘が照らす淡い輝きが美しいこの王都も、今は炎に包まれていた。
「火を消せーっ!」
そんな声が、そこら中から聞こえて来る。
だが、誰かが火を放っているのか、炎の勢いは広がるばかりだった。
軍を編成していたフリックは、初めは火事だと思った。
だが、街の様子が違う事に気付くと「シルか!?」と毒づく。
何故、もっと早くに気付かなかったのか。
もし自分がシルと同じ立場なら……。
「くそっ!」
フリックは走り出した。
「フリック殿!?」
「ここはジュリアに任せるぜ。俺は王宮へ行く」
逃げ惑う人々と、燃えさかる炎を消そうとする人々。
静かだった街は、瞬く間に大混乱になっていた。
「敵はどこから来ているんだ」
敵兵の姿が見当たらない。
それでも広がる炎を見れば、誰かが火を着けている筈なのだ。
だが、王宮に来るまでの間に敵らしい姿を見つける事は出来なかった。
そして---。
「何だこれは……?」
王宮で暮らす人々や警備をする者。
様々な者達が何者かに斬り倒されていた。
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