予兆

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「誰かエランを呼んで下さい」 シルは近くで控えている侍女に向かって声をかけた。 その侍女の1人が「暫くお待ち下さい」と言ってその場から去って行く。 「もっと違う理由があるはずです」 そう、ミランが女王になった事が気に入らないのであれば、私兵を集める必要が無い。 自らが王都に赴き、直にそう言えばいいのだ。 また上流貴族には、そうする事の出来る権利が与えられていた。 「お呼びですか?」 程なくしてエランがシルの元へと来た。 生真面目なエランらしく正装している。 そして王国式の敬礼をした。 「2人の時は、堅苦しい挨拶は必要ありません」 「しかし軍務卿に対し--」 エランはシルの言葉に対し異を唱えようとした。 だが、シルが片手を上げて遮り最後まで言えない。 エランは仕方なく直立してシルの言葉を待った。 「エランらしいですね。アキュアが認めただけの事はある」 シルは適当に腰を下ろすように促すと、更に言葉を続けた。 「ガロル領の事ですが、もう一度お願いしたい」 「ガロル領ですか?」 「そうです。出来るだけ詳しい情報を持って来てもらえないでしょうか」 シルはエランの目を真っ直ぐ見つめてそう言った。
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