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アキュアは窓から離れると、体に巻き付けていたシーツを引き裂いていく。
胸と腰にそのシーツを巻き付けると、部屋の扉を開けた。
廊下に人の気配は無く、薄気味悪い程に静かだった。
「既に非難したのか?」
いや、そんな事は有り得ない。
動けない者を置き去りにするような神官は居ないのだ。
では、この静けさは一体……。
「誰も居ないのか?」
アキュアは叫んだが、やはり何の反応も無い。
「まぁいい……」
ゆっくりと廊下を歩きながら、周囲に意識を集中させていく。
「とりあえず神殿か」
アキュアは前に進む歩を早めながら、大地教団の神殿へと向かって行った。
「動くな……」
神殿の入り口近くまで来た時、アキュアの後ろから女の声がした。
短剣を手にし、アキュアに向けて構えを取っている。
「お前はあの時の少女か」
振り向く事なく言うアキュアに「そうだ」と応える女は、足音を立てずに近付いていた。
「そんな物を私に向けても無意味だぞ?」
「あたしは別に戦う意思は無い」
「そうか……」
そこでようやくアキュアは、短剣を構える少女に向き直った。
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