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そこは、神官が使う部屋だった。
小さな祭壇があり、その前には香がたかれている。
甘い香りが心地良く、何故か落ち着く感じがした。
「これ、これ」
リリィーは嬉しそうに、神官が使う羽織りを広げていく。
その羽織りを重ね合わせ、縫い合わせていった。
「急いでますからね。あまり丈夫ではありませんが、少しは恥ずかしさも和らぐと思います」
そう言って、出来上がった羽織りをアキュアに渡した。
「もう出来たのか?」
驚くアキュア。
そのアキュアに「あたしは農村の生まれで、得意なんですよ」と言って微笑んだ。
「そ、そうか……すまん……」
身に着けていた布を脱ぎ、リリィーの作った服を着ていく。
布が体とこすれる度に吐息が漏れるが、今はそんな事は言っていられない。
そんなアキュアを見たリリィーが「これを飲んでください」と、白い粉を渡した。
「これは?」
「この薬は魔石です。これを飲むと、症状は軽くなります」
リリィーはそう言いながら、腕の焼き印を見せた。
「あたしも同じ魔石を吸いました」
アキュアは焼き印を見ながら、ただ頷く事しか出来なかった。
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