予兆

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-- 「シルも大変だな」 隣で横になっているフリックに寄り添い、アキュアは耳元で囁くように言った。 だが、フリックからの返事は無い。 寝たのかと顔を覗き込んだアキュアに、フリックはギュッと抱きしめた。 柔らかな肌の感触がフリックに伝わって来る。 「お前はいい女になったよ」 「な、何をいきなり--」 シルに言われたからだろうか。 今夜はアキュアが愛おしくてたまらない。 「ど、どうした……っ!?」 アキュアが何か言おうとする度に、フリックがキツく抱きしめて来る。 そして2人の唇が重なると、アキュアは何も言えなくなった。 「フリック……」 フリックの暑くなった体がアキュアと交わっていく。 その度に、アキュアの口から吐息が洩れていった。 「あぁ……フリック……」 フリックの動きに合わせるように、アキュアの体がピクンっと動いていく。 2人だけの甘い時間が過ぎようとしていた。 だが、それも本当に僅かな時間だった。 予期せぬ来客が突然現れたのだ。 息を潜め、その手には短剣が握られている。 完全に気配を消し、2人の隙を伺っていた。
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