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シオンは薄れた意識の中で、不思議な光景を見ていた。
目の前には今にも泣き出しそうなシルバが両手を握り締めて何かを言っている。
それが何なのかは聞き取る事は出来ない。
「シルバ……生きて……」
シオンは目が熱くなるのを感じていた。
今から2年前、あの戦いの時に自らを犠牲にしたグラン王国の女王。
女神の目覚めを止める事で、最終的にこの世界は救われた。
あの時、シルバは女神の夢の中へと消えた筈なのだ。
それが今……。
「シルバ、良く聞こえないよ……」
シオンはシルバの手を取ろうとした。
だが、シルバは首を横に振り消えていく。
「シルバ!?」
シオンはそこで意識が戻った。
「夢……?」
本当にそうだろうか。
「--オン」
「誰?」
誰かが呼ぶその声に、シオンは完全に意識を取り戻した。
「フリックさん!?」
「やっと起きたか」
フリックはシルの攻撃をかわしながら、シオンを呼び続けていた。
「動けるなら一度退却するぞ」
フリックはシルと体の位置を入れ替えると、シオンを背にして構えた。
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