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ミランはライラと共に、デルララから脱出する事だけを考えていた。
このまま港まで行って船を奪うか、それとも馬を調達して他の貴族に身を寄せるか。
まだ、敵らしい姿は見ていない。
それでも、いつ出会うか分からない状況ではあるのだ。
「港で船を奪いましょう」
ライラはミランに言った。
「使用人の数が多すぎます。これでは馬車で逃げたとしても、必ず犠牲者が出る」
「船を奪うのですか?」
ミランは女王なのだ。
そんな事が出来る筈が無い。
「奪うしかありません。女王を船に乗せようと思う者は少ないと思います」
「ですが、女王が民の物を奪うなどと……」
ミランは足を止めると、首を横に振った。
「では、私が船を用意致します」
1人の使用人がミランに言った。
「私の家は漁師です。女王がお乗りになるような船ではありませんが、奪うよりいいと思います」
「そんな、私の為に……」
「構いません。女王様のお役に立てるのであれば、これほどの幸せはありません」
そう言う使用人は、準備をすると言って港へ急いで行った。
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