1586人が本棚に入れています
本棚に追加
枯れ葉色の空に冷たい風が吹いていた。
人の姿は無く、気配も感じられない。
決して人間が住む事が出来ないその大陸を、人々は魔大陸と呼んでいた。
ファーレル大陸で、人々の命運を賭けた戦いが行われていた時、魔族達は興味を持つ事なく静観していた。
あの戦いで人間が負けていれば、間違いなくこの世界は消滅していた筈なのだ。
それでも魔族が動かなかったのは、この世界は終わらないと知っていたからなのかもしれない。
「退屈ね……」
1人の少女が呟く。
腰まで伸ばした薄紫の髪を指に絡ませながら、その少女は呟いている。
年齢は14歳位だろうか。
あどけなさの残る顔立ちに、ヒラヒラとしたドレスに身を包んでいる。
どこか人形のようにも見えるその少女は、丸い目を大きく開けて、窓際から空を眺めていた。
「ホント退屈……」
少女はここで深い溜め息を吐いた。
「ティリシア様。どうされました?」
窓際から外を見ていたティリシアに、男がゆっくりと近付いて来る。
「暇なのよ。あなたもそうでしょ?」
ティリシアは、そう言って男に視線を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!