予兆

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どこの者なのかは分からない。 この薄暗い部屋にとけ込むような黒い出で立ち。 髪が長いのか、首の後ろで縛っている。 そんな招かざる客が、アキュアとフリックの隙を伺っているのだ。 間違い無くどこかの刺客である事は分かる。 だが、その刺客に気付いていないアキュアとフリックの2人は、寝台の上で愛を確かめ合っていた。 「いい気なものだな」 つい呟いてしまった。 しまったと口を塞いだが、その僅かな異変に2人は気付いた。 寝台の横に置かれた短剣をフリックがすかさず握ると、刺客に向かって躊躇なく投げたのだ。 「くっ---!」 刺客に向かって真っ直ぐ飛んでいく。 その短剣を刺客は軽く弾き返していた。 「どこの者だ?」 フリックは落ち着いた声で立ち上がろうとする。 「まずは何か着た方がいいと思うが」 フリックを制止させたアキュアは、シーツを取り上げると、体の前に被せながら立ち上がった。 胸から隠れているものの、その姿は妖艶で、同じ女でも見とれてしまう。 そんなアキュアが、ゆっくりと刺客に向かった。
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