1586人が本棚に入れています
本棚に追加
/997ページ
「不味い……」
少女は口に運んだカップをテーブルに置いた。
「私の煎れたお茶は飲めないか?」
「……」
「まぁいい。逃げなかっただけ許してやる」
アキュアはそう言って残りのお茶を飲み干していく。
少女は不味いと言ったが、アキュアは美味しいと感じている。
だからなのか、満足そうな表情をしていた。
「さて、聞かせてもらおうか」
アキュアはテーブルに空になったカップを置くと、少女に向き直った。
口元に笑みを浮かべたアキュアは、同じ女から見ても綺麗だと素直に思った。
「どうした?早く話さないと、王国の者が来るぞ」
「王国……?」
「やっと口を開いたか」
可愛らしい少女の声に、アキュアは何だか可笑しくなってしまう。
まさか、自分達の命を狙った者が、こんなに可愛らしいとは夢にも思わなかったのだ。
「間もなく軍務卿が来る。そうなれば、お前は牢の中だ」
その言葉に少女の顔色が悪くなっていった。
「良く聞け。お前は私達に気付かれる事なくここに入り込んだ。つまり、それなりの訓練を積んだ者と言う事になる訳だ」
アキュアはようやく鋭い視線を少女に向けた。
最初のコメントを投稿しよう!