予兆

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2人が王宮の門に差し掛かった時、エランが少数の兵を連れ、ガロル領に出発する所だった。 「エランか!?」 そんなエランを見かけたフリックは、懐かしい仲間の名を呼んだ。 「これはフリック殿ではありませんか」 エランはフリックを視界に入れると、王国式の敬礼をした。 まるで手本のような美しい敬礼に、フリックは思わず笑みをこぼす。 「相変わらずだな」 「フリック殿こそ、お元気そうですな」 2人はお互いの手を握り、久し振りの再開を喜んだ。 そして、エランがフリックの名を呼んだ事で、兵達は驚き戸惑っている。 アキュア率いる神聖騎士団。 王国の中で最強の部隊と名を轟かし、その副官として名を知らしめていた。 まさに、伝説と言っても過言ではない男が、自分達の目の前に居るのだ。 兵達は言葉を失ったまま、成り行きを見守っていた。 「昔話をする時間はありません。エラン将軍も一緒に来てください」 シルはそう言って先を急がせた。 「少しは感動をだな……」 フリックはそこで言葉を止めた。 今のシルに何を言っても無理そうだったからだ。
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