予兆

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「話はフリックから聞きました。刺客はその奥で拘束しているのですね」 シルの言葉にアキュアとフリックが顔を見合う。 そして、エランは何を言っているのかと首を傾げていた。 「悪いが拘束はしていない」 扉を開け中に入るように促す。 部屋の中には寝台とテーブルがあり、刺客である少女は、落ち着き無く寝台に腰を下ろしていた。 少女はシルとエランの姿を見て体を小さくした。 「良く逃げませんでしたね」 寝台の横では窓が開いている。 逃げようと思えば、簡単に出来ただろう。 シルは感心とも呆れるとも言えるような表情をしている。 「聞きたい事がありますが、その前に……」 シルは少女の手を取ると、強引に立ち上がらせた。 「なるほど……確かに奴隷の焼き印ですね」 シルの言葉に少女の体が震え出した。 「もう少し優しくしたらどうだ?」 見かねたフリックが少女をシルから引き離す。 「何を言っているのですか?あなた方を殺そうとしたのですよ?」 「だが、少女だ」 本音を言えば、この少女に勝ち目など無い。 無理に抑え込む必要も無いのだ。
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