予兆

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「これは、指揮官を示す物です。持っていて損は無いでしょう」 「用意がいいじゃないか」 「偶然ですよ」 バッチを受け取るフリックは、仕方なく1つをアキュアに投げた。 「フリックすまんな」 「勝手にしろ」 2人は左肩にバッチを取り付けると、準備の為に部屋から出て行く。 残されたシルとエランは、お互いに見つめ合っていた。 「フリックも大変ですね」 「美しくなられても、本質は変わりませんな」 2人は同時に溜め息を吐いていた。 アキュアにとって刺客が来た事など問題ではないのだろう。 自分が命を狙われるのであれば、その敵を撃退してしまえばいいのだ。 そんな事よりも、目の前に現れた奴隷として生きてきた少女。 その心の傷の方がアキュアには問題なのだ。 「さぁ行こうか」 支度を終えたアキュアが戻って来た。 左の腰には剣が見える。 「アキュア将軍、外で待つ兵に号令を……」 エランはアキュアの前で頭を下げた。 「私は今は将軍ではない。指揮はお前がするべきだ」 「そうだな」 後から部屋に戻って来たフリックは、アキュアの言葉に頷いていた。
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