予兆

33/37

1586人が本棚に入れています
本棚に追加
/997ページ
「今より我々はガロル領へ赴く。同じ王国の者と言えど、油断はするな!」 外で待っていた兵にエランが号令を掛けた。 その言葉に、1人として乱れる事無く敬礼をしている。 「相変わらずだな」 そんな姿を見ていたフリックが呟くと「私達も相変わらずだ」と、アキュアは笑みをこぼす。 そんな2人を見つけた兵達からは、どよめきが走っていた。 「あの方がアキュア将軍……」 誰かが呟く。 赤い髪が月明かりに反射し、アキュアの美しさを一段とかもし出していた。 兵達は出発する事を忘れて見入っている。 そんな兵達に向かってエランは「アキュア殿とフリック殿とは、今より我らと共に行動する事になった。2人の足を引っ張らないように気を張れ」と声を発した。 全員がゆっくりと進み出す。 「これで、ここに---」 「言うなよ?」 エランの言葉をフリックが遮っていた。 エランが何を言おうとしたのかを理解したのだ。 「あいつは、ここに居てはいけないんだよ。今頃2人で平和に暮らしてるだろうしな」 「そうですな……」 その時エランは、少し寂しい表情をしていた。
/997ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1586人が本棚に入れています
本棚に追加