予兆

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-- 「そっちだ。しくじるなよ」 金髪のツインテールが揺れる。 小麦色に焼けた肌が、汗にまみれながら少年に声を掛けた。 「分かってるから少し黙ってて」 空色の髪が風になびく。 その少年が、ツインテールの少女に向かってそう言うと、手にしていた弓を強く引いた。 じっくりと狙いを定め、目の前に居る獲物に向かって矢を放った。 「どうだ?」 美しい弧を描きながら、矢は獲物に向かって飛んでいった。 「やった……?」 一瞬だが獲物がよろめく。 だが、2人の喜びも束の間、獲物は矢が刺さったまま逃げて行った。 「逃げられたか……」 がっかりする少女に少年が歩み寄った。 「今日も食事にありつけないかもね……」 「流石に疲れた。シオンも飲むか?」 シオンと呼ばれた少年は、水筒を黙って受け取る。 そして、ゆっくりと水を口に含んでいった。 ここ数日、2人は食べ物を口にしていない。 「やっぱり、砂漠で獲物を狩るのは難しいかもしれないね」 生物を拒む砂漠の大地。 昼間は灼熱の太陽に照らされ、面白い程に体力が奪われていく。 しかも水しか口にしていない2人は、そろそろ体力も限界に近付いていた。
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