予兆

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「ねぇライラ……」 シオンは隣に座る少女に声を掛けた。 「何だ?」 そのライラは力無く返事をした。 「一度、グラン王国に帰らない?」 「グラン王国か……」 そう言えば長く王国には戻っていない。 あの戦いの後、2人は旅に出ていた。 この広い大陸をこの目で見、いろんな事を感じて来た。 学ぶ事も沢山あった。 特にシオンは精神的にも強くなったと思っている。 いつ頃だったか、背中を預ける事の出来る存在になっていた。 「なぁシオン。王国に戻ってどうするんだ?」 ライラは髪をほどきながらそう言った。 自由になった髪が僅かな風に揺れている。 「2人で一緒に暮らすのはどう?」 シオンは今まで口にした事の無かった言葉を発していた。 「な、何……!?」 ライラは目をキョロキョロさせて驚く。 「こ、この暑さで……そ、その何だ……頭がおかしくなったのか?」 ライラは顔を赤くしていた。 それは決して暑さの為ではない。 そんな事は誰に言われる訳でもなく自分で分かっている。 だからこそ、シオンに分からないように顔を背けた。
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