予兆

36/37

1586人が本棚に入れています
本棚に追加
/997ページ
「どうしたの?」 シオンはライラを見た。 「な、何でも無いから向こうを見ていろ」 耳先まで真っ赤になるライラは、シオンに背中を向けた。 そのシオンは溜め息を吐くと、何かに気付いたように東の空を見た。 何だか寒気のようなものを感じる。 「何だろう……」 「どうした?」 「うん、何て言うのかな……」 何かを感じ取ったのか、シオンの目が険しくなっていた。 「シオンにそんな力があったのか?」 同じように東の空を見たライラは、特に何も感じない。 いつもと変わらない空だった。 「力なんて無いよ。でも、言葉では言い表せない嫌な感じがするんだ」 シオンはそう言うが、やはりライラは何も感じない。 だが、シオンが言うのだ。 東の方角で何か起こっているのだろう。 そしてその東とは、正にグラン王国の方向なのだ。 「やはり戻った方が良さそうだ」 ライラは立ち上がる。 今、グラン王国に戻った所で何かが出来るとは思えない。 それでも少し位は役に立てるだろう。 ライラは自分にそう言い聞かせていた。
/997ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1586人が本棚に入れています
本棚に追加