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「どうしたの?」
シオンはライラを見た。
「な、何でも無いから向こうを見ていろ」
耳先まで真っ赤になるライラは、シオンに背中を向けた。
そのシオンは溜め息を吐くと、何かに気付いたように東の空を見た。
何だか寒気のようなものを感じる。
「何だろう……」
「どうした?」
「うん、何て言うのかな……」
何かを感じ取ったのか、シオンの目が険しくなっていた。
「シオンにそんな力があったのか?」
同じように東の空を見たライラは、特に何も感じない。
いつもと変わらない空だった。
「力なんて無いよ。でも、言葉では言い表せない嫌な感じがするんだ」
シオンはそう言うが、やはりライラは何も感じない。
だが、シオンが言うのだ。
東の方角で何か起こっているのだろう。
そしてその東とは、正にグラン王国の方向なのだ。
「やはり戻った方が良さそうだ」
ライラは立ち上がる。
今、グラン王国に戻った所で何かが出来るとは思えない。
それでも少し位は役に立てるだろう。
ライラは自分にそう言い聞かせていた。
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