予兆

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「シオンが言うのだからな。私は信じるぞ」 ライラはシオンを見つめた。 優しい眼差しを向けるライラに、シオンは一瞬ドキリとしてしまう。 「何となくそう感じるだけで、気のせいかもしれないんだよ?」 「王国に帰るつもりだったのなら、どちらでもいいじゃないか」 意地悪そうな笑みをシオンに向けるライラは、心の中では信用していた。 そう、あれから2年も前の事になる。 シオンは人類の命運を賭けた神々との戦いを経験していた。 その時シオンは、神の子供である天使と契約していたのだ。 絶大にして巨大なその力を使い、人々を救ったシオン。 今では、その天使との契約は失われているが、僅かながらその力が残っているのかもしれないと、ライラは思ったのだ。 「行こうか」 ライラはシオンに手を差し出した。 シオンはその手を握ると立ち上がる。 「あの戦いを経験しても、人々の本質は争う事なのかな……」 もう一度、東の空をシオンは見た。 やはり、何か嫌な感覚がシオンを刺激してくる。 2人は手を握り合ったまま見つめ合うと、お互いが頷きあっていた。
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