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「まったく……。俺達に対しての宣戦布告と受け取っていいんだよな」
冷たい壁に背中を預け、フリックは呟いていた。
ガロル領に来てから、既に数日が過ぎていた。
何故、こんな事になったのかと、フリックは毒づきながら考え込む。
「やはり、オデッサの裏切りか……」
「少し静かにしたらどうだ?」
冷たい壁の反対側からアキュアの声が聞こえた。
湿っぽい部屋には簡素な寝台が1つ。
窓には鉄格子がはめられており、逃げる事は出来ない。
床は、どこから入り込んだのか、腐った水が溜まっていた。
そんな部屋の中に閉じ込められたフリックは、ここが牢の中なのだと改めて認識させられる。
しかも、王国の使者が入るような所ではない。
罪人や奴隷となった者が入れられる最悪な場所なのだ。
「静かに出来る訳が無いだろうが!?」
フリックは思わず声を荒げた。
その声が薄暗い空間へと吸い込まれ、反響している。
「今は何も出来ない。エランの部下を信じて待つしかな」
「こんな地下まで入って来れるとは思えないがな」
そう、ここは誰であろうと入る事の出来ない場所だった。
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